1.e306wh
2.drain away
3.最後の電車
4.#4 A♭(wind)



 

1.e306wh

アンドロイドのエリちゃんは
バブルの遺跡
真っ白なドレスを着て
腰を30度に曲げてお辞儀
瞳の色はお好みで五色から
髪の毛の色は品のいい焦げ茶

その瞳はセルロイド
なんてもう古い
網膜認証もできる
滑らかな関節と
表情に合わせ共に動く皮膚
そして芳ばしいコーヒーを淹れて
優雅に笑う

現代の科学で精巧に作られたお人形さん

うちのエリはいい子なんです
おたくはいかが?
うちのエリはこれからなんです
まずお皿を覚えさせなきゃ

我が社が総力を挙げて作った
まるで人間のように柔らかい
新型アンドロイドのエリ
ご自宅のルールを覚え
お皿洗いやお洗濯
その他お望みのことは
全て完璧にこなします
各ご家庭に
アンドロイドはいかがですか

アンドロイドのエリちゃんにも
やがて終わりがくる
それを知ると人は
ため息をつき電話をかける
次の機種は何にしましょうか
プッシュボタンで選んでください
そうね今度はe307blで

今度エリを買い換えるんです
ガタがきたから
うちのエリもそろそろなんです
消耗品ですものね
少しお金がかかっても
上等なのを
エリがいるといないとでは
とても生活が変わりますもの

アンドロイドのエリちゃん
新しくやってきた
新型のエリちゃん
青いドレスがよく似合う
腰を30度に曲げてお辞儀
そして芳ばしいコーヒーを淹れて
優雅に笑う



 

2.drain away

今日は30%の地域で
小雨が降るらしい
傘は持たずに出かけた

空の色が変わった
雨粒が肩に当たる
ここは30%に入っていたらしい
ほらまた楽観視だ
僕はあの日も
よその話だと思っていたんだろう

僕は君のことが好きだった
もっと早く言うべきだった

雨雨降り続け
どうか止まないでくれ
このまま僕が溶けて
なくなってしまうまで


あああのとき楽しかったなあ
適当に入った店で
馬鹿みたいな話をして
ケタケタ笑ってた

あのときにいっぺんでも
帰りたいな帰れないな
離した手はもう繋がれない
ごめんなさい


僕は君を大切に思っていた
もっと早くに言うべきだった
誰か君を止められたとしたら
それは僕だったのに

雨雨降り続け
どうか止まないでくれ
このまま僕が溶けて
なくなってしまうまで

雨雨降り続け
足りないよもっともっと
全て洗い流して
始まりに戻るまで

降り続け
どうか止まないでくれ
このまま僕が溶けて
なくなってしまうまで

雨雨降り続け
足りないよもっともっと
全て洗い流して
始まりに戻るまで

雨雨降り続け



 

3.最後の電車

あと10分だけ もう少しだけ
子どもみたいに繰り返しても
ちゃんと時計は見ている
床に脱ぎ散らかした服を拾って
髪を梳かしたら
小さなキスをして
いつも通りの顔をして

最後の電車の時間だ
もうお別れだね
手を繋いで駅へ行こう
指を絡め足を揃え
またねの声に顔を上げる
改札の前で離れる
向こう側に消えいく
後ろ姿に笑顔で手を振る

今日は隣にいて
朝まで帰らないで私の側にいて
その言葉は少しでも長く
一緒にいるために飲み込んだ

私のものにしたいなんて
言えるほど私は立派なものじゃない
手を繋いでどこかに行こう
誰にも責められない場所へ
なんてね

最後の電車の時間だ
もうお別れだね
手を繋いで駅へ行こう
指を絡め足を揃え
いつもの道を通りすぎて
ほんの少し遠回りしよう
風が強いね寒いねって肩を寄せて

最後の電車の時間だ
もうお別れだね
ここから先は踏み込めない
踏み出せない 越えられない
またねの声に顔を上げる
一番綺麗な顔をしよう
歩いて行く一歩一歩
向こう側に消えていく
後ろ姿をずっと見ていた



 

4.#4 A♭(wind)

(instrumental)





作詞・作曲・編曲・うた・ピアノ amamori
ドラム まぁびぃ
ミックス・マスタリング ドラ内山

ドラムREC Alt Studio
ピアノ・うたREC Pythagora Studio
 




(c) 2018 amamori